科目の好き嫌い

大学入試と高校入試の決定的な違い

 今や多くの人が大学に進学する時代になりました(文部科学省の2020年度学校基本調査によると、大学・短大への進学率は過去最高となる58.6%)。昔に比べて、学部や学科の種類も増え、入試方法もとても複雑になりました。しかし、大学入試では受検する学部によって試験科目が異なる、という点は今も昔も変わっていません。だから、「数学が苦手だから文系の学部に行こう」「世界史が嫌いだからそれが入試科目にない学科を受けよう」などといった選択(それ自体が良いか悪いかは別として)が可能になります。
 しかし、高校入試ではそうはいきません。高校入試では、一部の例外を除いてほぼ全ての公立高校で5科目の試験があります。得意、不得意に関わらず全ての科目で勝負しなければなりません。つまり、特定の科目を避けて受検することはできないのです。私立高校は3科目入試が多いのですが、都立高校と違って「入試相談」という特殊なシステムがあるので同列には語れません。(入試相談では基準として5科や9科の内申点が使われます)。また、3科目だからといって、社会や理科を疎かにすると、入学後に苦労すると私立高校の先生方も口をそろえて言います。そのため、私立でも5科目入試を導入する高校が増えています。

中3の頑張り

 毎年感じるのですが、入試を控えた中3生は、12月頃から、緊張感、切迫感を持って勉強に取り組み、その姿には目をみはるものがあります。彼らの多くは、社会や理科の暗記を集中的にやることで得点アップを目指します。これは、社会や理科という科目が短期間で成果を出しやすいからです。しかし、厳しい言い方をすれば、多くの人がこの時期まで本気で社会や理科に取り組んでいなかったという見方もできます。
 社会や理科は、「嫌いだ」という人がたくさんいます。もちろん国語や数学、英語が嫌いだという人も同じぐらいいるでしょう。しかし、国語、数学、英語は、嫌いと言いながらも「やらないといけない」という意識を持つ人が多いのに対して、社会と理科は「嫌いだからやらない」というワガママを押し通す人が多いように思えます。特に中1、中2の頃はその傾向が顕著です。中3の前半でもまだその危険性に気付かない人が多くいますが、秋・冬になる頃には、さすがに社会と理科を軽視していては合格点に届かないという現実を認識します。
 社会や理科は、覚悟を決めて本気で勉強を始めると、1ヶ月ぐらいで目に見えて成果が出てきます。用語などを1つ暗記すれば、解ける問題が1つ増えるので、成果を実感しやすいのです。そして、解ける問題が増えることによって自信がつき、その後の学習効果は加速的に高まります。要は、最初の一歩を踏み出すかどうかというその一点だけなのです。現に、毎年入試直前の生徒たちは口々に「こんなに上がるなら、もっと早くからやっておけばよかった」と言います。これから受験を迎える生徒たちは、この先輩たちの言葉を真剣に受け止めるべきでしょう。

嫌いな科目の勉強法

 嫌いな科目、苦手な科目を効果的に勉強する方法はあるのでしょうか。努力せずに得意になる方法というのはありませんが、効率よく勉強するために意識すべきポイントというものはあります。
 まず、苦手科目のなかでも、どの分野が苦手なのか、あるいは比較的よくできる分野は何なのか(例えば理科ならば、地震波の速度計算は苦手だが、動物の体のつくりはある程度覚えられる、など)を把握しておくことが重要です。その上で、苦手分野に時間をかけ、必要ならばその分野の最初まで戻ってやり直したり、易しいレベルの問題から解いていくといいと思います。比較的できる分野の復習を時々入れて自信を付け、やる気を継続させるというのも有効かもしれません。
 また、暗記ではまとめページをずっと見ていても効果は出ません。まだ覚えていない状態でも、いきなり問題を解くことから始めましょう。すぐに答えを見ないで、頑張って思い出そうとすることが大切です。この作業は苦しいですが、そうやって思い出そうと苦しんだ末に答えを見ると、すぐに見た場合より深く頭に残ります。
 いずれにしろ、とにかく勉強を始めることが大切です。嫌だからといって、先延ばしにしても何も解決しません。むしろ状況はどんどん悪化するでしょう。具体的な勉強方法も、実際に勉強をやっている中で試行錯誤しながら自分に合うやり方を見つけていくことになります。苦手科目を勉強するのですから、すぐに上手くいかなくても焦らず、勉強を継続することが大切です。